劇団ユニット・ラビッツの稽古場日記

HEAVEN(ヘブン)
-Just the way you are-

登場人物

富士郎 パトラッシュ
鈴
艦長　吾朗
賢治
リリィ
ゴーダマ
ロミオ




ナレーション　　ある日のことでございます。お釈迦様は極楽の蓮池のふちを、ひとりでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊（ずい）からは、なんとも言えないよいにおいが、絶間なくあたりへあふれております。極楽はちょうど朝なのでございましょう。

　　　　　　　　　朝の光の中、たたずむ犬一匹

ロミオ　　　　（あくび）
ロミオ　　　　（伸び）
ロミオ　　　　（掻き掻き）
声１　　　　　ロミオ！えさだよ！
ロミオ　　　　えさっていうな！ごはんって言え！
声２　　　　　このばか犬が！
声１　　　　　ばか犬！
ロミオ　　　　え？（あたりを見回し）
声　　　　　　・・・。
ロミオ　　　　鈴・・・、富士郎・・・？
ロミオ　　　　まさかね・・・。ありえない。
　　　　　　　
　　　　　　　　そこにするすると下りてきた輝く糸
ロミオ　　　　ん？
ロミオ　　　　糸・・・？
声１　　　　　ロミオ！　　　　　　　
　
　　　　　　　　大海原

鈴　　　　　　ねぇねぇ、今なんか光った！
艦長　　　　　どこだ？
鈴　　　　　　あっちあっち。
賢治　　　　　ああ、あのぴかぴか光ってる感じの・
艦長　　　　　星屑だろう。なにしろここは海の上だ。まるで宇宙を漂うかのごとく星が輝いている。
鈴　　　　　　新月なんだね、とっても星が綺麗だ。
賢治　　　　　波もうねりもこれ以上ないぐらい穏やかだし、そろそろ休憩しましょう。
艦長　　　　　よおし、オートコントロール
賢治　　　　　オートコントロール
　　　　　　　　　トランクを背負う艦長
鈴　　　　　　ねぇ、操縦中と休憩中、何が違うの？
艦長　　　　　なにって、そのなんだなあ、操縦するという気分と、今は何にもしないぞという気分の違　いかな。
賢治　　　　　まあ、これだけ何も起きないと、気合っていうか、気分の問題だよ。艦長の場合はトランクを背負うことで休憩になる。
鈴　　　　　　なんで？
艦長　　　　　ここに俺のすべてがあるんだ。休憩なんてしてると誰かにとられやしないかと、少し心配になってね。
鈴　　　　　　誰も取ったりしないのにね。３人しかいないし。
賢治　　　　　艦長・・・。
艦長　　　　　いや、なにしろ全てだからな。
鈴　　　　　　ふうん、すべてねぇ、何が入ってるの？　あ、また光った！
賢治　　　　　気のせいだろ。
鈴　　　　　　ちがうよ、ほら、また！
賢治　　　　　ん？
艦長　　　　　すべては気分の問題だ。
鈴　　　　　　だって、ほら・・・。
　　　　　　　　　見つめる先には何もない。あるのは静寂そして
　　　　　　　　　沈黙

　　　　　　　　　　　　　―明日に続く―

劇中の会話に登場したコブ鯛です。

お問い合わせが多く寄せられましたので、ここに掲載いたします。

艦長　　　　　俺は、こぶ鯛になりたいんだ。
鈴　　　　　　こぶ鯛？って鯛の仲間？
賢治　　　　　やはりこぶ鯛でしたか。僕の願いも同じです。艦長！
パトラッシュ　なに、見つめ合ってんだ？
賢治　　　　　こぶ鯛は成長する段階で、オスになるかメスになるか自分で決められる。
艦長　　　　　そう、自分で決められるんだ。
　　　　　　　　しかもサザエ貝すら噛み砕ける強いあごを持っている。
　　　　　　　　当初はカタツムリも雌雄同体だからいいかなと考えたりもしたが・・、
　　　　　　　　あまりにも主体性が無さ過ぎる。
賢治　　　　　たとえ、カタツムリであってもかまいません。
　　　　　　　　ただ、あんまり考えたりしてなさそうなのがネックでした。
艦長　　　　　こぶ鯛！いい響きだ。
賢治　　　　　私、どこまでもついていきます！幸せにしてください！
艦長　　　　　ん？賢治、おまえがメスになるつもりか？
賢治　　　　　あ、・・・。（照れている）

12月3日　郡山に初雪が降った日曜日。

劇団ユニット・ラビッツ第4回公演「HEAVEN」～Just the way you are～はその幕を無事下ろすことができました。

ご来場いただきました皆様、心より御礼申し上げます。

僕らが、舞台の仕込みから始まり最終日のバラシまで、芝居のことだけを考えてさえいればよかった数日間。

この日々のために、考え、動き、話し、時にはけんかもして創り上げてきた芝居。

終わってしまえば、そこには何も残らない。

でも、僕達の中には何かが、確実に何かが残っています。

そしてその芝居の時間と空間を共有してくださった皆様の中にも何かが残っていればいいな。



写真の猿は小道具・・・、いや出演者です。こいつも何かを感じてくれているかな？

明日からは2月11日の演劇祭に向けてユニラビは走り出します。

なんだか泳ぎ続けないと死んじゃうという回遊魚みたいです。